【耳栓】音楽稼業の耳の健康事情【難聴】

今年に入って、怒涛のごとく仕事が山積みになっている。
一日で10時間以上もヘッドホンで大音量での細かい音のチェックを続けていると、さすがに僕の強靭な耳も悲鳴をあげているようで、耳の痛みから始まり頭痛につながってきた。

それでも、仕事を断ったり納期を飛ばすことはできないし、自分主導のプロジェクトだって停止するつもりはさらさらない。
とはいえ、全然自分に無関係だと思っていた耳関係のトラブルが、長期的に考えると必ず自分の仕事や音楽活動に深刻なダメージを与えることも容易に想定できるので、少し考えて対策を講じることにした。
(何より耳の疲れは体全体の倦怠感につながる。体力があるのに何をする気にもなれなくなってしまうのは、独特の感覚だ)

今日は、音関係の仕事をしている音楽クリエイターやエンジニアなど、アマチュアも含め「耳」との付き合い方について、現状の僕の経験からの見識を記したいと思います。

「難聴」なんて言うほど、僕の耳は軟弱じゃない

僕は高校の時代から、ヘッドホンで大音量で音を聴くといった不健康リスナーだった。
音が大きい方が迫力があるし、なにより細かいニュアンスが聴き取れるのが楽しい。
高音質なヘッドホンを導入した時も、その解像度や音の広がりにはすごく感動した覚えがある。

僕は不協和音やB級的な汚い音を使った音楽も好きなので、ノイズや前衛なんでもござれでよく聴いていた。
自分の今作っている音楽にも通ずる事だが、音が飽和しているからこそできる表現がある、とは今でも思っている。

音ってのは、嫌いな音楽は雑音に、好きな音楽は心地よく聞こえるので、耳の負荷がとらえかたによっても変化するらしい。
僕は好きな音楽をどれだけ大きな音量で聴いても、耳に負担を感じるような事はなかった。

耳へのダメージの原因

僕の場合、耳のダメージの原因はほとんどが仕事で音を扱うときにある。
音楽のミックスダウンでは、EQでのピークカットや細かいバランスや音処理の都合上、かなり大きな音を長時間にわたって聴き続けなければならない。

また、レコーディングやボーカルレッスンでも、声質やニュアンスのチェックが必要になるため、音量を下げすぎる事はできない。
主にアイドル系に多いのだが、耳をつんざくような喉のしまったキンキンな歌を5時間以上も継続して聴いていると、歌の内容がどうこう関係なく耳がイカれてしまう。

とはいえ、僕が音をちゃんと聞いていないわけにはいかないので、強制的に耳にダメージを蓄積したまま作業は続く。
こんな事が続いていれば、どんな人の耳だって壊れてしまうのは時間の問題だ。

「超高域」「超低域」「偏った音質のソース」に注意

ミキシングをしているとわかるのだが、音が全く聞こえないのに、ボリュームメーターがピークを振り切る周波数がある。
いわゆる「非可聴音域」というやつで、倍音やモスキート音などに代表される、音として認識できない音だ。

この帯域を大きく上げてみると、音は聞こえなくとも、なんか耳が押されているような言葉にしにくい圧迫感に襲われる。
聞こえない音も耳には確実にダメージを与えてくるし、ミキシングやマスタリングではこうした帯域をいかに整理できるかが、心地よい音を作るための一つのポイントだったりする。
※EQのマスタリング用のプリセットで、30hz以下のローカット、15khz以上のハイカットなどが施されているプリセットなどが、この日可聴音域への対策と言える。

僕個人の意見としては、ボーカルはローカットを何hz以下で入れるとか、マスタリングでは何hz以上をカットする、といった決めつけ的な対応は好きではない。
男性ボーカルだとローがキモ担ってくる場合があるし、超高音域は実際にカットしてみると、音の印象にものすごく影響をもっていることがわかる。
あくまで「邪魔な音」を削るべきで、ルーティーン的に処理してしまうと、音楽的な良さを大きく損なってしまうケースが必ず生じる。

といった考え方の結果、それぞれのソースを都度確認してしまうため、これもまたダメージの要因のひとつとなる。
高低域の非可聴音域もさながら、ミドルにピークのあるボーカルソースやキンキンのエレキギターもなかなかだ。
本当に耳が裂けてしまうんじゃないかという「痛い」音素と付き合って、安心して聴いてられる音に加工するには結構な労力を要する。

少し専門的な話になってしまったが、要するに音を扱う仕事である以上、音質にこだわるほど「耳の健康」との問題は避けて通れないようにできているのだ。
ガタがきた僕の耳について、現状の対策を紹介します。

圧倒的に少ない「耳への医療処置」

「耳が聞こえない」となると外科手術の分野になると思うのだが、こうした耳に負荷がかかり続ける業種において、耳のダメージへの具体的な対策方法は「音を聞かないで耳を休める事」しか存在しない。
スポーツのようにストレッチをしたり酸素カプセルに入ったり、筋肉に効果的な食事をとったりといった効果的な方法は「耳」の問い扱いには存在せず、ただ「休める」ことしか方法がない。
休むったって仕事は待ってくれない。休む事ができないから困ってるんじゃないか!と思う。

いくつか僕の今とっている対策を紹介する。

モニターボリュームを下げる。

基本だが、レコーディングの際に僕がテイク判断を要求されない場合は、僕のヘッドホンのみモニターボリュームを下げている。
もちろん、ボイストレーナーやエンジニアとして意見を求められる事もしばしばなので、小さい音で聞き流しつつ、気になったポイントのみボリュームを上げて確認するようにしている。
自分がテイク判断をするときはこうはいかないので、休めるときに耳を休ませておくのは、管理として必要な事だ。

僕はサウスポーだからか、左耳に大きく負荷がかかる。
耳に疲労感が生じたときは、片耳でのモニターをメインにして回避する事もあったりする。

スピーカーの使用

昼間など、ある程度音量を出しても問題ない時間帯では、スピーカーでのリスニングを推奨する。
ヘッドホンやイヤホンは、かなり音を緻密に確認できる代償に、やはりダメージが大きい。

音のチェックが細かく必要になるのは、主に音声編集やミキシング、マスタリングといった作業のときだ。
ボーカルの修正作業などにはスピーカーモニターでもさほど影響は生じないので、可能な限りスピーカーで行うように努めている。
ミキシングなどでも、ある程度をスピーカーモニターで進めて、仕上げからヘッドホンと併用するといった方法をとると、耳の負担を抑える事ができる。
作業の中には、アナライザーやRMSメーター、コンプレッションのかかり値など、ある程度は視覚で判断できる要素も多くある。
経験に基づいて予測も混ぜて行っている限りは、作業に大きな事故は生じにくいと思う。

耳栓

とりあえず、調べてみて以下のようなものを試している。

耳栓というと「音を聞こえなくする装置」だと認識していたのだが、説明書きをみると「80dbの音を50dbまで軽減」との事で、「音を聞こえにくくする装置」らしい。
実際に使ってみると、高低域が大きく削られた、イコライズでいうラジオトーン的な聞こえ方になった。
高低域からのダメージは大きく軽減されるので、工事現場などが近い方など、前述の周波数帯でストレスを感じられている方には大きな効果を発揮する事だろう。

会話に関しても、大雑把なニュアンスであれば問題なくやりとりができる。
体の穴をふさぐという閉塞感もそこまでではないので、慣れれば音関連の仕事以外の際はつけっぱなしでも良いような気がする。

ふまえて、今僕が気になっているのは以下の商品である。



ミュージシャン用途につくられたオランダの製品との事で「イヤープロテクター」という僕が欲しがっている要素をそのまま言葉にしたような商品だ。
耳栓にフィルターをつけて使用するのだが、用途や音楽ジャンルによってフィルターを付け替えるとの事で、あくまでリスニングへの影響を少ないままに耳へのダメージの軽減を目的としているようだ。
聴こえてほしい音だけ聴こえてくる、なんて虫のいい話だが、周波数という概念においては不可能ではない話だと思うし、ボーカルレコーディングの時だけでもダメージを軽減できる商品があれば、価格に関係なく必要なアイテムだと思う。

「耳」を大事にしよう

ライブで耳がやられた、なんてのは数日もすれば直る事がほとんどだが、ほぼ永久的に耳を酷使しなければならない立場になってみると、耳を健康に保つ事の重要性が非常によく理解できる。

頭がいたくなるのが癖になると、内容に関係なく音と距離を置きたくなってしまうし、音楽を楽しむどころの話ではない。
至らない自己管理のせいで音そのものを嫌いになってしまうなんて、音楽家としてはあまりに悲しいし無意味である。

こんな記事を最後まで読んでいただいた方は、きっとこうした事象になにかしらの関心がある人だと思う。

どうか、自分の耳を大事にしてください。そして軽んじないでください。
音楽家は全員がこのリスクをかかえているし、取り返しがつかなくなる前に、正しい理解と対策を講じる必要があります。

ご自分の音楽人生のために。
健康な耳でこそ、素敵な音楽が曇る事なく聴こえるのでしょうから。

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です